「甲賀の前挽鋸製造および流通に関する資料群」の林業遺産認定について
甲南ふれあいの館で展示中の「甲賀の前挽鋸(まえびきのこ)製造および流通に関する資料群」が、一般社団法人日本森林学会によって林業遺産に認定されました。林業遺産への認定は、市では初めてです。
「甲賀の前挽鋸製造および流通に関する資料群」について
前挽鋸は、縦挽鋸の一種で、機械化以前の中心的な製材道具です。導入された初期の大鋸(おが)は二人挽きでしたが、それを一人で挽けるように開発されたものが前挽鋸であり、製材工程の効率化に貢献しました。縦挽鋸の導入は構造材の利用樹種を変え、それ以前はスギやヒノキ、クリに限られていたものが、アカマツやケヤキなどの利用を可能にし、農家などの民家建築が大きく発展したことが指摘されています。
甲賀地域では、18世紀半ばに前挽鋸製造技術が移転され、播州三木と並ぶ生産地として、20世紀前半まで隆盛を誇りました。明治期には洋鋼の導入により生産量を増やしました。その販路は全国に及び、例えば北海道開拓記念館所蔵の前挽鋸のうち、約半数は甲賀産でした。
甲南ふれあいの館には、甲賀前挽鋸生産の草分けの1つである八里平右衛門家の工場にあった前挽鋸や製造道具一式を中心に、流通に関わる文書等が保存・展示されています。これらは重要有形民俗文化財として指定されていますが、森林資源利用や建築文化に画期をもたらしたと思われる前挽鋸の技術や流通の様相を示すものとして、林業遺産として相応しいと判断されました。
甲南ふれあいの館(住所 甲南町葛木925番地 / 開館時間 10時~17時 / 休館日 月・火曜日、12月26日~1月3日/入館無料)では認定証も展示していますので、ぜひご観覧ください。