○甲賀市子どものいじめ防止条例
平成26年3月28日
条例第12号
すべての子どもたちは、それぞれが一人の人間としてかけがえのない存在であり、次代の社会を担う大切な宝です。
子どもたちの心と体に苦しみや痛みをもたらすいじめは、子どもたちが人間として尊重され成長する権利を著しく侵害するものです。このようないじめを防止し、子どもたちが安心して学び成長できる環境を整えることはすべての市民が協働して取り組むべき重要課題です。
互いの生命の尊重を基盤としたまちづくりに向けて、いじめを許さない文化と風土を社会全体でつくりあげることを決意し、いじめの防止についての基本理念のもと、いじめの防止のための施策を推進することにより、子どもが安心して生活し、健やかに成長することができる、いじめのないまちの実現をめざし、ここに甲賀市子どものいじめ防止条例を制定します。
(目的)
第1条 この条例は、いじめが、いじめを受けた子どもの教育を受ける権利を著しく侵害し、その心身の健全な成長及び人格の形成に重大な影響を与えるのみならず、その生命又は身体に重大な危険を生じさせるおそれがあるものであることに鑑み、いじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号。以下「法」という。)の趣旨を踏まえ、いじめの防止のための施策の基本となる事項を定めることにより、子どもが安心して生活し、健やかに成長することができるいじめのないまちの実現をめざすことを目的とする。
(1) いじめ 子どもに対して、当該子どもが在籍する学校に在籍している等当該子どもと一定の人間関係にある他の子どもが行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった子どもが心身の苦痛を感じているものをいう。
(2) 子ども 第4号に規定する学校に通学する児童及び生徒その他これらの者と等しくいじめの防止の対象とすることが適当と認められる者をいう。
(3) 市立学校 甲賀市立学校条例(平成16年甲賀市条例第150号)別表第1及び別表第2に規定する小学校及び中学校をいう。
(4) 学校 前号に規定する市立学校並びに本市の区域内にある市立学校以外の小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校をいう。
(5) 保護者 親権を有する者、未成年後見人その他の子どもを現に監護する者をいう。
(6) 市民等 市内に在住、在勤又は在学する者並びに市内で事業活動を行う個人、企業及び団体をいう。
(7) 関係機関等 警察署、児童相談所、法務局その他子どものいじめの問題に関係する機関及び団体をいう。
(基本理念)
第3条 いじめは、子どもの尊厳を脅かし、心身の健やかな成長及び人格の形成に深刻な影響を与えることから、いかなる理由によるかを問わず、何人もこれを行ってはならない。
2 市、学校、保護者及び市民等は、子どもが安心して生活し学ぶことができる環境を整えるため、それぞれの責務及び役割を自覚し、主体的かつ積極的に連携し、いじめの防止に取り組まなければならない。
(市の責務)
第4条 市は、この条例の基本理念に基づき、子どもをいじめから守るために必要な施策を総合的に講じなければならない。
2 市は、いじめが子どもの心身に及ぼす影響、いじめを防止することの重要性、いじめに係る相談制度等について広報及び啓発活動を行わなければならない。
(市立学校の責務)
第5条 市立学校は、この条例の基本理念に基づき、当該学校に在籍する子どもの保護者及び関係機関等と連携を図りつつ、いじめの防止及び早期発見に取り組まなければならない。
2 市立学校は、子どもがいじめを受けていると思われるときは、適切かつ迅速にこれに対処しなければならない。
3 市立学校は、子ども及び保護者が安心して相談することができるよう環境を整えなければならない。
(保護者の役割)
第6条 保護者は、この条例の基本理念に基づき、子どもの教育に第一義的な責任があることを認識し、成長及び発達に応じて適切な支援を行うとともに、子どもの心情を理解しながら、子どもが安心して過ごせるよう子どもの健全な育成に努めなければならない。
2 保護者は、いじめを正しく認識するとともに、子どもに対し、いじめは許されない行為であることを理解させるよう努めなければならない。
3 保護者は、市、市立学校を除く学校の設置者及びその設置する学校が講ずるいじめの防止のための措置に協力するよう努めなければならない。
(子どもの役割)
第7条 子どもは、この条例の基本理念に基づき、互いの違いを認め合い、共に支え合い、いじめのない学校生活が送れるよう努めなければならない。
(市民等の役割)
第8条 市民等は、この条例の基本理念に基づき、地域において子どもに対する見守り、声かけ等を行い、子どもが安心して過ごすことができる環境づくりに努めなければならない。
2 市民等は、いじめを発見した場合又はいじめの疑いがあると認めた場合には、市、学校又は関係機関等に情報を提供するよう努めなければならない。
(財政上の措置等)
第9条 市は、いじめの防止のための施策を推進するために必要な財政上の措置を講じるよう努めなければならない。
(甲賀市いじめ防止基本方針の策定等)
第10条 市は、法第12条の規定に基づき甲賀市いじめ防止基本方針(以下「市基本方針」という。)を策定するとともに、必要に応じて見直しを行うものとする。
2 市は、市基本方針の策定又は見直しを行ったときは、これを公表するものとする。
(学校いじめ防止基本方針の策定等)
第11条 市立学校は、法第13条の規定に基づき学校いじめ防止基本方針(以下「学校基本方針」という。)を策定するとともに、必要に応じて見直しを行うものとする。
2 市立学校は、学校基本方針の策定又は見直しを行ったときは、これを公表するものとする。
(いじめの防止及び早期発見)
第12条 市は、いじめの防止及び早期発見を行うため、次に掲げる取り組みを推進しなければならない。
(1) 子どもたち一人ひとりがいじめを許さないという認識を持ち、いじめをなくすために自らが考え、行動する力を育成する取り組み
(2) 市立学校におけるいじめの実態を把握する取り組み
(3) 市立学校への指導及び支援に関する取り組み
(相談体制等の整備)
第13条 市は、子ども、保護者その他いじめの防止に関わる者が安心して相談、通報又は情報提供(以下「相談等」という。)ができるよういじめに関する体制を整備し、これを周知しなければならない。
2 市は、関係機関等と連携し、いじめに関する情報の一元化及び共有化を図るとともに、相談等があった場合は、速やかに対応しなければならない。
(甲賀市子どものいじめ問題対策連絡協議会)
第14条 市は、法第14条第1項の規定に基づき、いじめの防止等に関係する機関及び関係団体と連携を図るため、甲賀市教育委員会(以下「教育委員会」という。)に、甲賀市子どものいじめ問題対策連絡協議会(以下「連絡協議会」という。)を置く。
2 連絡協議会の庶務は、教育委員会事務局において処理する。
3 前2項に定めるもののほか、連絡協議会の組織、運営その他必要な事項は、教育委員会規則で定める。
(甲賀市子どものいじめ問題対策委員会)
第15条 市は、いじめの防止のための施策を実効的に行い、相談等を受けたいじめ(いじめの疑いを認めた場合として相談等をされたものを含む。)について専門的な見地から調査を行うため、地方自治法(昭和22年法律第67号)第138条の4第3項の規定に基づき、教育委員会の附属機関として、甲賀市子どものいじめ問題対策委員会(以下「対策委員会」という。)を置く。
2 対策委員会は、教育委員会の諮問に応じ、次に掲げる事項について調査する。
(1) いじめの防止に関する対策のあり方や実効性を高めるための調査研究に関すること。
(2) 重大事態(法第28条第1項に規定する重大事態をいう。以下同じ。)が市立学校に発生した場合における、その事実の確認並びに調査及び審査に関すること。
(3) その他対策委員会の設置目的を達成するために必要な事項に関すること。
3 対策委員会は、委員5人以内をもって組織する。
4 委員は、次に掲げるもののうちから教育委員会が委嘱する。
(1) 臨床心理士等子どもの発達、心理等についての専門的知識を有する者
(2) 学識経験を有する者
(3) 弁護士
(4) 前3号に掲げるもののほか、教育委員会が適当と認める者
5 委員の任期は、2年とする。ただし、委員の欠けた場合における補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
6 委員は、再任されることができる。
7 対策委員会の庶務は、教育委員会事務局において処理する。
8 前各項に定めるもののほか、対策委員会の組織、運営その他必要な事項は、教育委員会規則で定める。
(重大事態への対処)
第16条 教育委員会は、重大事態が市立学校に在籍する子どもに発生した場合には、市長に報告しなければならない。
2 教育委員会又は市立学校は、重大事態に対処するとともに、事実関係を明確にするための調査をしなければならない。
3 教育委員会は、前項の調査内容を市長に報告しなければならない。
(甲賀市子どものいじめ調査委員会)
第17条 市は、重大事態への対処又は当該重大事態と同種の事態の発生防止のため、法第30条第2項の規定に基づき、市長の附属機関として、甲賀市子どものいじめ調査委員会(以下「調査委員会」という。)を置く。
2 調査委員会は、市長の諮問に応じ、教育委員会又は市立学校が行ったいじめの重大事態の調査結果について調査する。
3 調査委員会は、委員5人以内をもって組織する。
4 委員は、次に掲げるもののうちから、市長が委嘱する。
(1) 臨床心理士等子どもの発達、心理等についての専門的知識を有する者
(2) 学識経験を有する者
(3) 弁護士
(4) 前3号に掲げるもののほか、市長が適当と認める者
5 委員の任期は、2年とする。ただし、委員の欠けた場合における補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
6 委員は、再任されることができる。
7 調査委員会の庶務は、市民環境部において処理する。
8 前各項に定めるもののほか、調査委員会の組織、運営その他必要な事項は、規則で定める。
(調査の結果報告)
第18条 市長は、前条第2項の規定による調査を行ったときは、その結果を議会に報告しなければならない。
(調査の結果を踏まえた措置等)
第19条 市長及び教育委員会は、第17条第2項の規定による調査の結果を踏まえ、自らの権限及び責任において、この調査に係る重大事態への対処又はこの重大事態と同種の事態の発生防止のために必要な措置を講じるものとする。
(個人情報に対する取扱い)
第20条 市は、この条例の施行に当たって知り得た個人情報の保護及び取扱いに万全を期するものとし、当該個人情報をいじめの防止のための施策の遂行以外に用いてはならない。
2 いじめに関する相談等に関係した者は、正当な理由なく、その際に知り得た個人情報を他人に漏らしてはならない。
(市立学校以外の学校への協力要請)
第21条 市は、市立学校を除く学校の設置者又は管理者に対し、いじめの防止について必要な協力を求めることができる。
2 対策委員会及び調査委員会は、市立学校を除く学校の設置者又は管理者に対し、対策委員会及び調査委員会が行う調査について、協力を求めることができる。
付則
この条例は、平成26年4月1日から施行する。