○甲賀市の行政発掘調査に係る積算標準

平成16年10月1日

告示第152号

目的

第1 本標準は、甲賀市内における発掘調査を円滑に行うため、発掘調査に係る経費の積算のための標準を定める。

適用範囲

第2 本標準の適用範囲は、甲賀市内で甲賀市教育委員会(以下「教育委員会」という。)及び各関連機関が実施する開発事業等に伴う発掘調査とする。

本標準の構成

第3 本標準で定める事項は、発掘調査実施に係る作業内容と作業量及び調査期間を算出するための歩掛かりに関する事項であり、経費算出のための単価及び事務経費率等は各調査機関で定めることとする。

本標準を適用する発掘調査の作業内容

第4 本標準を適用する発掘調査は、埋蔵文化財保護の行政的な手法の一つである「記録保存」の措置として行われるものであるから、発掘作業や整理作業は一定の水準を保って行われなければならない。そのため、以下の作業について必要に応じて経費を積算することとする。

1 発掘作業

(1) 事前準備

ア 発掘調査実施のための調整作業

イ 調査事務所設営・機材搬入・安全施設設置

(2) 発掘前段階作業

ア 測量基準点設置等

イ 地形測量

(3) 発掘・掘削作業

ア 表土掘削作業

イ 遺物包含層掘削作業

ウ 遺構検出作業

エ 遺構掘削作業

オ 記録作業

カ 埋戻し作業

(4) 事後処理

ア 調査事務所等の撤収作業

イ 暫定整理

ウ 清算事務

2 整理作業

(1) 記録類と出土品の整理作業

ア 記録類の整理作業

イ 出土品の整理

ウ 出土品及び遺構採取サンプル等の科学的分析

(2) 報告書作成作業

ア 出土品の図化・製図作業

イ 出土遺構図の製図作業

ウ 出土遺物の写真撮影作業

エ 報告書図版の編集作業

オ 報告書文章作成作業

カ 報告書校正作業

(3) 調査成果物収納作業

ア 収納インデックス作成作業

イ 出土遺物・記録類の所定場所への収納作業

現地発掘調査経費の積算

第5 現地発掘調査経費は、発掘調査に要する期間から算出される人件費等の経費と、発掘調査面積から算出される機材等の経費及び事務的経費の総計とする。

1 発掘調査期間から算出される経費

発掘調査は、基本的には土砂を掘削する作業であることから、掘削作業に要する総作業数量を、従事する1日あたりの人員若しくは機械数で除した日数を積算の基準とする。

(1) 表土除去

ア 重機使用の場合

(ア) バケット容量0.4m3級のバックホー1日当たりの作業量は、30~60m3とし、通常の土質の場合は45m3/台・日を平均的なものとし、作業対象地の土質や状況に応じて変更する。

(イ) バケット容量0.7m3級のバックホー1日当たりの作業量は、40~80m3とし、通常の土質の場合は、60m3/台・日を平均的なものとし、作業対象地の土質や状況に応じて変更する。

(ウ) 遺構面に至るまでの表土層の厚さは、遺跡の内容が不明の場合は、0.5mを基準とする。ただし、試掘調査等により遺構面の深さがわかっている場合は、これに従う。

(エ) 埋め戻しを必要とする場合は、バケット容量0.4m3級のバックホー1日当たりの作業量を50~100m3とする。

イ 手堀掘削の場合

(ア) 作業員1日当たりの作業量は、1m3とする。

(イ) その他要件は、重機掘削に準じる。

(2) 遺物包含層掘削及び遺構検出並びに遺構掘削作業(以下遺構等掘削作業という。)

ア 遺構等掘削作業に要する作業量は、0.3~0.7m3/人・日で、0.5m3を標準とする。

イ 遺構等掘削作業の対象とする標準的な厚みは、遺構の状況が不詳の場合は、0.3mとする。

ウ 調査面積にしめる遺構の割合(遺構密度)は、15~80%の間とし、35%を標準とする。

エ 通常遺物包含層は、表土若しくは遺構掘削対象土量の中に含めて積算することとするが、試掘調査により上記イでは対応できない状態の遺物包含層が確認されている場合は、この掘削に要する員数を別途計上する。

(3) 掘削作業に要する員数及び日数の算出

ア 表土掘削は、状況不詳の場合、平均掘削値(0.4m3級のバックホー)45m3を基準とし、以下の算式により必要数量を求める。

重機台数=調査面積×0.5m(A)÷45m3(B)

対象遺跡の状況が明らかな場合は、A及びBの数値を実態に合わせたものとする。

通常1日当たりの使用重機台数は、1台とし、複数の重機を使用する場合は、先に求めた台数を1日当たりの投入重機台数で除した数値を重機掘削に要する日数とする。

イ 遺構等掘削作業は、作業員1日当たりの作業面積は、標準作業量0.5m3/日で標準掘削深度0.3mの場合1m2当たり0.6日(0.3m3÷0.5m3)であり、1日当たりの作業面積は、1.7m2となる。従って、状況不詳の遺構密度0.35の遺跡の場合に要する作業員数は、以下の算式により求める。

延べ作業員数=発掘面積×0.35(C)÷1.7m2(D)

遺構等発掘作業日数=延べ作業員数÷1日当たり投入作業員数(E)

対象遺跡の状況が明らかな場合は、C、D及びEの数値を実態に合わせたものとする。

(4) 発掘日数の算出(測量・写真撮影作業)

測量、写真撮影等の記録作業に要する日数は、発掘調査面積や遺跡の状況に規制されることから、先に求めた遺構等発掘作業日数を基に算出することが妥当であり、この日数の20%(測量委託を実施する場合は、10%)を平均的なものとする。

従って、発掘作業に要する日数は、以下の算式により求める。

発掘日数=遺構等発掘作業日数×1.2or1.1

(5) 現地調査日数の算出

発掘日数に、現地に着手する準備作業及び現地からの撤収作業を含めた期間を現地調査日数とする。現地調査日数は、調査の規模や、遺跡の内容に規制されることから(4)で求めた発掘日数を基に算出することが妥当であり、この日数の25%を平均的なものとする。

従って、現地調査日数は、以下の算式により求める。

現地調査日数=発掘日数×1.25

(6) 暫定整理日数

現地での発掘調査終了後に本格的な整理調査の対象となる遺物の選別、成果物の一時整理及び現地調査の精算事務等を行う期間を必要とする場合は、これを暫定整理日数として計上する。暫定整理日数も調査の規模や、遺跡の内容に規制されることから現地調査期間を基に算出する事が妥当であり、この期間の20%程度を充てるものとする。従って、暫定整理は、以下の算式により求める。

暫定整理日数=現地調査日数×1.2

(7) 現地発掘調査に要する期間(以下「調査日数」という。)

現地調査日数に暫定整理期間を加えた日数を調査日数という。

(8) 経費算出における発掘調査期間の適用

発掘調査経費の算出に際し、上記により算出した遺構等掘削日数、発掘日数、現地調査日数、調査日数は、以下の項目の算出に適用する。

なお、複数の遺構面が存在する場合は、状況に応じて作業内数量を加えることとする。

ア 遺構等掘削日数

(ア) 発掘調査に従事する作業員賃金の算出

(イ) 上記作業員旅費

イ 発掘日数

(ア) 測量等に作業員を用いる場合の作業員賃金

(イ) 上記作業員旅費

ウ 現地調査日数

リース物件の算出基礎(1箇月当たりの稼働日数16日として算出)

(ア) リース月数の算出 現地日数÷16日

(イ) リース日数の算出 現地日数÷16日×30日

(ウ) 電話料、汲み取り料等役務費

(エ) 光熱水費

エ 調査日数

(ア) 調査員(職員)人件費算出基礎 調査日数÷16日=調査月数

(イ) 会計年度任用職員人件費算出基礎

(ウ) 調査補助員賃金算出基礎

(エ) 調査員等旅費

2 発掘調査面積から算出される経費

発掘調査面積により算出することが適当な経費は、以下の通りである。この場合も、複数の遺構面が存在することが明らかである場合は、これを考慮した額を計上することとする。

(1) 需用費[消耗品]

1,000m2以上発掘調査の場合は50円/m2、1,000m2以下の発掘調査の場合は150円/m2を目安として計上する。

ア 調査用機材類 消耗品の50~60%を目安とする。

イ 調査用文具類 消耗品の20~30%を目安とする。

ウ 撮影用フィルム類 消耗品の20~30%を目安とする。

エ 燃料費 10円/m2程度を目安とするが、湧水池の場合は、20円~30円/m2程度を目安とする。

オ 現像焼付費 1,000m2以上は20円/m2程度、1,000m2以下は50円/m2程度を目安とする。

カ 図面等焼付費 3円/m2程度を目安とする。

(2) 委託料

ア 測量委託

各調査機関又は調査機関の属する自治体等(以下「各調査機関等」という。)の設計基準に基づく

イ 遺構写真撮影委託

各調査機関等の基準に基づく

3 発掘調査の状況により計上する経費

(1) 報償費

調査において有識者の助言を必要とする場合等に計上。経費は、各調査機関等の基準に基づき算出する。

(2) 役務費

電話仮設料

必要に応じて仮設することができる。経費は、所定の経費を計上する。

(3) 使用料及び賃借料

重機、車両等回送料

調査対象地の状況に応じ必要回数を計上する。経費は、各調査機関等の基準に基づき算出する。

(4) 委託料

ア 分析委託

調査の実施において不可欠な場合には、科学的分析を委託することができる。経費は各調査機関等の基準若しくは妥当な見積による。

イ 作業委託

必要に応じて発掘調査作業の一部を委託することができる。委託経費は、各調査機関等の基準に基づき算出する。

ウ 安全管理委託

必要に応じて委託する。特に大規模な遺跡の場合や、人家の密集する地域等においては、現場の安全管理上専門の業者に委託することが望ましい。経費は、各調査機関等の基準に基づき算出する。

(5) 工事請負費

ア 電気・水道工事請負

必要に応じて計上する。経費は、各調査機関等の基準に基づき算出する。

イ 補助労務請負

必要に応じて計上する。経費は、各調査機関等の基準に基づき算出する。

4 事務的な経費

ア 共済費

労災保険料、雇用保険料等は、必要に応じ所定の経費を計上する。

イ 事務費

必要に応じ、各調査機関等の基準に基づき計上する。

精算

第6 本標準は、発掘調査着手前に必要とする経費の算出に場合に適用するものであり、発掘調査終了後に行う経費の精算は、実績に基づきこれを行う。

整理調査の積算の考え方

1 整理調査は報告書に刊行(又はこれに代わる発掘調査の成果に関する情報を国民に還元する手段を完成させ、これを実行するまで)までを原則とする。

2 整理調査の対象とする資料数が明確な場合は、対象資料に対する歩掛かりを設定して経費を算出する。

3 整理対象とする資料数が明確でない場合(発掘調査と同時に整理経費を計上せざるを得ない場合)は、現地調査経費に対して一定の計数を掛けて算出する。

4 上記いずれの場合も、歩掛かりは県下の平均値よりやや上に設定し、各調査機関の状況、伝統によってこれを補正する。

5 上記いずれの場合も、出来高で精算する。

整理調査の積算標準(文化庁報告の骨子)

発掘調査と整理調査は、相関関係にある。従って、整理調査に要する経費の算定方法は、発掘調査に要する経費に一定の比率を乗じて算出する。

作業員 発掘調査×0.4

調査員 発掘調査×0.7

補正要素

調査期間が短い遺跡の整理調査は、調査員の負担が増える。

31日~60日 ×1.5までの補正

30日以下 ×2.5以上の補正

出土遺物量が多ければ整理に要する作業員数が増える。

5箱以下(1000m2) ×0.5以上の補正

30箱以上(1000m2) ×2.0までの補正

出土遺物の種類・内容によって作業量を補正する必要がある。

具体的数値無し

発掘調査の際に調査員が監督した作業員数の構成が整理調査の際に調査員が監督する作業員数の構成と著しく異なる場合は、整理期間算出数理を補正する。

調査員の整理調査に関与する割合の多寡に応じて、作業員数、調査員数を補正する。

報告書執筆の目安 1日当たり0.6~1.4頁

総量に対する数値は無し

消耗品等に対する数値は無し

遺物整理のための歩掛り

作業の種類

土器

土器

(点/人)

木器

木器

(点/人)

石器

石器

(点/人)

金属器

金属器

(点/人)

歩掛り係数(人/箱)

箱/1日1人

点/1箱

歩掛り係数(人/箱)

箱/1日1人

点/1箱

歩掛り係数(人/箱)

箱/1日1人

点/箱

歩掛り係数(人/箱)

箱/1日1人

点/箱

80

180

8

15

20

30

8

15

類別

0.20

5.00

400.00

900.0

0.20

5.00

40.00

75.0

0.20

5.00

100.00

150.0

0.20

5.00

40.00

75.0

洗浄

0.70

1.43

114.4

257.4

0.70

1.43

11.4

21.5

0.30

3.33

66.6

99.9

0.70

1.43

11.4

21.5

注記

1.55

0.65

52.0

117.0

0.45

2.22

17.8

33.3

0.90

1.11

22.2

33.3

0.45

2.22

17.8

33.3

復元

3.80

0.26

20.8

46.8

0.00

0.00

0.0

0.0

0.00

0.00

0.0

0.0

0.38

2.63

21.0

39.5

抽出

0.29

3.45

276.0

621.0

0.29

3.45

27.6

51.8

0.58

1.72

34.4

51.6

0.29

3.45

27.6

51.8

実測

28.00

0.04

3.2

7.2

5.85

0.17

1.4

2.6

20.10

0.05

1.0

1.5

9.00

0.11

0.9

1.7

カード作成

2.30

0.43

34.4

77.4

0.35

2.86

22.9

42.9

0.69

1.45

29.0

43.5

0.35

2.86

22.9

42.9

製図(トレース)

7.50

0.13

10.4

23.4

5.70

0.18

1.4

2.7

9.30

0.11

2.2

3.3

3.75

0.27

2.2

4.1

編集(実測図版)

2.44

0.41

32.8

73.8

1.02

0.98

7.8

14.7

1.12

0.89

17.8

26.7

0.58

1.72

13.8

25.8

写真撮影

6.38

0.16

12.8

28.8

0.98

1.02

8.2

15.3

0.39

2.56

51.2

76.8

0.98

1.02

8.2

15.3

0.48

2.08

166.4

374.4

0.09

11.11

88.9

166.7

0.04

25.00

500.0

750.0

0.09

11.11

88.9

166.7

編集(写真図版)

2.38

0.42

33.6

75.6

1.16

0.86

6.9

12.9

0.66

1.52

30.4

45.6

0.33

3.03

24.2

45.5

成果物整理

0.10

10.00

800.0

1800.0

0.10

10.00

80.0

150.0

0.10

10.00

200.0

300.0

0.10

10.00

80.0

150.0

成果物登録

0.10

10.00

800.0

1800.0

0.10

10.00

80.0

150.0

0.10

10.00

200.0

300.0

0.10

10.00

80.0

150.0

成果物収納

0.10

10.00

800.0

1800.0

0.10

10.00

80.0

150.0

0.10

10.00

200.0

300.0

0.10

10.00

80.0

150.0

同定

0.00

0.00

0.0

0.0

1.90

0.53

4.2

8.0

0.00

0.00

0.0

0.0

0.00

0.00

0.0

0.0

保存処理

0.00

0.00

0.0

0.0

1.10

0.91

7.3

13.7

0.00

0.00

0.0

0.0

1.10

0.91

7.3

13.7

*特殊な遺物の場合は、別途協議の上定める。

整理調査作業基本工程

画像

(令和2年告示第41号)

この告示は、令和2年4月1日から施行する。

甲賀市の行政発掘調査に係る積算標準

平成16年10月1日 告示第152号

(令和2年4月1日施行)

体系情報
第12編 育/第6章 文化財
沿革情報
平成16年10月1日 告示第152号
令和2年4月1日 告示第41号